仕事柄よく「将来映像の仕事がしたいです」という人に出会う。しかし一口に「映像の仕事」と言ってもジャンルによってやることがかなり異なる。
CM 制作やプロモーションビデオなのか、映画なのかテレビ番組なのか、それともアートとしての映像なのか。見るものにとっては最終的に見る術がテレビだったりスクリーンだったりするので全て同じに見えるのだが、作る側としては制作工程やお金の流れなどそれぞれ独自のものがあり全てとは言い切れないものの、それらはあまり干渉し合っていないことが多い(*2)。
なのである日電話が鳴り「『ワンダフル』っていう番組で
VJ やらない?」と番組担当のプロデューサーI氏から言われた時は、「是非」という返事を出したものの、 TVで VJとは具体的に何をやっていいのかがよく分からなかった。
後日詳しく話を訊くと、出演者の一人が前もって制作の現場やクラブ
VJ の現場などをVTR取材し、それを放映しますとのこと。ああ、それなら分かりやすいなと納得した。
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▲クラブで撮影したシーン |
しかし雑誌などの取材(*3)も含めていつも思うのだが、いい感じの素材を掲載したりVJをやっているところをカッコよく映したりしてみても、それはあくまでツールであり偶像であり、それを持ってしてVJをやるということがどんなことかというのはなかなか通じないだろうと思う。
VJが純粋な映像制作者と唯一違う点は、素材を使ってライブでプレイする点であり、2人の DJ が同じレコードを回してもまったく違う結果になるように、
VJ が素材をどう使うかで場所の雰囲気もまったく変わってくる。その辺りのバランスなどがVJ内でもまだ確立されておらず、当然それを上手く伝えられるメディアもまだまだこれからという感じなのだろう。
そういう意味で
VJ はまだ黎明期であり、 DJ やオーガナイザー/イベンター、クラブ関係者やメディアも含め、現在進行形で形を作っているところと言えるだろう。
私自身、普段は時間の無さからテレビはあまり見られないので「ワンダフル」というタイトルは知っていたものの、正直どういった内容でどのような人々が見ているのか分からなかった。だが取材が決まり周囲に報告したときの反応を見て、初めてその番組の影響力を知った。
これは恐らくこの番組で初めて
VJ というものを目にする、耳にするという人も多いだろうと思い、責任感を感じると共にそういう人達の反応が楽しみにもなってきた。
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そして取材当日。
「こんにちはー」とドアからカメラと共にレポーターの女性が入ってきて(*4)簡単なインタビュー。その後、その女性をビデオカメラで取り込み、簡単に加工して映像をつくり、軽くミックスしてみる(*5)。
そして、その夜渋谷の某クラブへ出向き、実際にプレイしている風景を撮影した。
これで撮影は終了となり「お疲れ様でしたー」と解散に至った。あとは放映を待つばかりと思っていたところ、最初に電話をくれたプロデューサー
I 氏から再び「スタジオでもVJやってくれない?」と言われ、急遽生放送中にVJをやることに。
慌てて番組を見て雰囲気をつかみ、そこから当日用の素材作りに入る。とは言え出演依頼があったのが放送2日前。ちょうど他の仕事で忙殺されていた時期だったので大した素材もできないまま本番の日がやってきた。
[Part2へつづく] (*1)TBS系で2002年まで放送されていた情報バラエティー番組。月〜木深夜に毎日生放送していた。
(*2) 自分自身が新米に近いキャリアなので全てとは言い切れないのだが。
(*3)スタイルあるいは職業としてVJに興味を持つ紙メディアからの取材依頼は多い。ファッション誌から就職情報誌(!)まで。
(*4) よくある「突撃!仕事場訪問」のスタイル。もちろんリハーサルやりましたが。
(*5) 自分では何とも思わない簡単な合成にレポーターのワンギャル嬢がいたく感動。確かに作り方が分からない人からすれば「映像マジック」に感じるだろう。
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