インターネットやE-メールが当たり前のメディアになってきた現在で、改めて浮き彫りになるのが紙メディアの存在意義だ。インターネット黎明期には「紙はもはやなくなるだろう」と言われてきたが、実際はその逆で、ここにきて紙のスペシャル感はある意味インターネット以前より強くなってきている。
その理由は幾つかあるが、一つには制作工程の複雑さと融通のきかなさがあげられるだろう。デザインを起こしてラフを作りデータがあがったら、印刷というネットにはない工程を通さなければならない。デジカメとフィルムの違いと同じことだが、上がりが紙の質、インクの種類、そして印刷機などでも全く違うものになるので、そこから最終的なものをイメージして予算取りなどもしていかなくてはならない。そして一度刷り上ったら修正やアンドゥ―もなく、複雑な工程を経て刹那な思いを固定化するという、ネットと比べ事前に意志を固める必要があるメディアである言えるだろう。
もう一つには流通の問題がある。インターネットは誰でも開設して世界中に公表することができる。確かに紙メディアも作ることはやる気さえあればほぼ誰にでも可能であるが、問題はそれを流通させようとした時だ。フリーペーパーを友達と作った。素晴らしい内容だ。しかしそれを発表するにあたりどこで配るのかを決める時に、駅のキオスクや街のコンビニに自主制作で作った本を置くのはまず不可能であり、普通の本屋さんでさえいわゆる取次ぎを通さないと難しいのが現実だ。これができるのは出版社だけであり、この門の狭さもマスコミと呼ばれるレベルの紙メディアが未だもって特別な存在である理由の一つであろう。
ことの常ではあるが影響力が強い狭き門なので、やはり優秀な人材が多く集まり、相乗効果でどんどん特別な存在となってきている。今回はそんな一流の雑誌や書籍などのエディトリアル/デザインを多く手がける、福間優子氏にインタビューをこころみた。
尚、氏はArtArc.netのDTPコーナーでも連載を行っているので、興味ある方はそちらもぜひご一読を。
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